『田園の詩』NO.103 「雨バテ」 (1999.9.21)


 この夏、全国で一番暑かった所は新潟だったそうです。北陸に限らず、関東も東北も、
そして北海道も記録的な猛暑に見舞われたようです。

 「真夏日」、「熱帯夜」、「家畜が熱射で倒れる」などのニュースが、北国の方から流れ
てきました。今年の日本列島の夏は、北と南の地方が逆転したような天候の異変が各地
で起きました。

 南国九州は毎日のように雨が降り、夏らしい日がないままに夏が終わってしまった感じ
がします。地元の新聞に≪ぐずついた8月≫という見出しで、この夏の大分の天気が総括
されていました。

 その記事によると、気象台の調べでは、気温は南から暖かく湿った風が流れ込んだ
ために下がらず平年並みでしたが、降水量は平年の2倍、日照時間は平年の78%しか
なかったそうです。そして、「雨の降らなかった日は、10〜14日の5日間だけ」と書い
ていました。

 ちょうどこの5日間は、私がお盆で檀家参りをした期間中でした。ほとんどが農家なの
で、お参りの後、お茶をいただきながらの話題は天気の稲に対する影響のことばかりで
した。

 「やっと晴れた。このままよい天気が続いてくれれば、いままでの日照不足も最小限
の影響で済み、稲の生育も持ち直す…」。こんな会話を交わしました。


      
     色づき始めた稲田の中に1本の雑草が飛び出ていました。それに偶然にも、
      アゲハチョウがとまりました。田圃の中ほどだったので、望遠レンズでもやっと
      これ位の大きさです。            (08.10.4写)



 そんな切実な願いも空しく、お盆を過ぎてまた雨の日が多くなり、9月になってもぐず
ついています。梅雨が長引いてそのまま秋霖に繋がったような気分になります。だから、
夏を経験した感じがしないのです。

 「夏バテをせずに済んだじゃないか」と言われるかも知れません。しかし、私も、そして
多分、自然も「雨バテ」になっています。

 「夏バテ」は涼しくなって実りの秋の御馳走を食べればすぐに元気を取り戻すことがで
きますが、「雨バテ」は簡単に解決できそうにありません。

 何より心配な稲は、例年より、背丈が伸びすぎているように見えます。穂は出揃っている
ものの弱々しさを感じます。果たして重たく頭を下げてくれるのでしょうか。
                          (住職・筆工)

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